ディーゼルエンジンのインジェクターは、燃料を正確に噴射し、エンジンの効率を最大限に引き出すために不可欠な部品です。しかし、インジェクターが汚れてしまうと、エンジンのパフォーマンスが低下し、燃費悪化や有害物質の増加を招く可能性があります。
本記事では、インジェクターの洗浄がなぜ重要なのか、適切なメンテナンス方法を中心に詳しく解説します。簡単に取り組めるメンテナンスのやり方を知って、エンジンの不調や故障を防ぎましょう!

著者紹介
全米シェアNo.1の自動車用品(添加剤・洗浄剤)を扱うBG Japanの「ケミカル副社長」です。
BG Japanでは、自動車(ガソリン・ディーゼル)に使われている様々な潤滑油や洗浄剤を販売しています。科学に基づいたBG製品を使うことにより、車両をより良い状態で維持できます。
今回の記事ではインジェクター洗浄の重要性について詳しく解説します。実際にかかる費用や適切なメンテナンス方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ディーゼルエンジン車のインジェクターとは?

ディーゼルエンジンのインジェクターとは、燃料噴霧を電子制御で調整し最適な燃料を供給するシステムです。インジェクターは、エンジンの上部に取り付けられており、シリンダー内に燃料を噴射しエンジンを動かします。
シリンダー内の圧力が高まったタイミングで燃料を噴射しますが、正確なタイミングで燃料が噴射されなければ、エンジンのパワーを最大限に引き出すことができません。
インジェクターからの噴射が無ければエンジンが動かないことから、インジェクターは「ディーゼルエンジンの命」と言われています。
インジェクターとキャブレターの違い
エンジンの燃料噴射装置には、インジェクター以外に「キャブレター」というものがあります。インジェクターとキャブレターは、どちらもエンジンに燃料を供給する装置です。
インジェクターとキャブレターの違いとしては、インジェクターが燃料噴射をコンピューターで制御しているのに対し、キャブレターは機械的に燃料噴射を行っています。キャブレターは構造がシンプルなのでメンテナンスがしやすく、セッティングの変更も簡単で、故障した際の修理もリーズナブルな価格で行えます。
しかし、キャブレターは環境の影響を受けやすく、安定した燃料供給ができなかったり、エンジンを良好な状態に保つのが難しいなどのデメリットがあります。一方で、インジェクターはコンピューターで制御されているため環境の影響を受けづらく、安定した燃料供給を行えます。
インジェクターの種類
インジェクターには「ポート噴射式インジェクター」と「気筒内直接噴射式インジェクター」と2つの種類があります。ここでは、インジェクターの2つの種類について、それぞれ特徴を解説していきます。
ポート噴射式インジェクター
ポート噴射式インジェクターとは、スロットルバルブ付近のインテークバルブに位置しており、ガソリンエンジンに使用される燃料噴射装置です。ポート噴射式インジェクターは、エンジンのポート内にガソリンを噴射し、空気と混合して燃焼用の混合気を作り出します。
この混合気は、エンジン内のピストンが上昇して圧縮されると、点火プラグによって火花が飛び、燃焼されて車の動力源になります。ポート噴射式インジェクターは、状況に応じて電子制御によって燃料噴射量やタイミングが最適化されており、燃料効率や燃費の向上が期待できます。
気筒内直接噴射式インジェクター
気筒内直接噴射式インジェクターは、ディーゼルエンジン向けの部品でガソリンではなく軽油を燃料源としています。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと異なり、吸気時に空気のみを吸入し、インジェクターがシリンダー内に直接軽油を霧状に噴射します。
さらに、ディーゼルエンジンでは、空気がガソリンエンジンの1.5~2倍の高圧で圧縮されます。圧縮された空気が高温になり燃料が噴射されると、点火装置を必要とせずに自然発火が起こり、強力な膨張力を発生させます。
気筒内直接噴射式インジェクターは、この高圧に耐えながら精密に燃料を噴射するディーゼルエンジンに不可欠な装置です。なお、ガソリンエンジンでも一部の車両には直噴方式が採用されています。
インジェクターが行う5種類の噴射方法について
インジェクターが行う噴射には、パイロット噴射やメイン噴射など5種類の方法があります。ここでは、インジェクターが行う5種類の噴射方法について、ひとつずつ詳しく解説していきます。
1.パイロット噴射
パイロット噴射とは、事前にシリンダー内部に混合気を作っておき、着火性を向上させるために行われる噴射です。パイロット噴射で着火性を向上させることで燃焼がスムーズに始まり、シリンダー内の燃焼温度が急激に上昇するのを防ぎます。
人体や環境へ悪影響を及ぼすNOX(窒素酸化物)は、燃焼温度が高くなるほど発生量が増えますが、パイロット噴射を行うことでNOXを低減できます。
2.プレ噴射
プレ噴射とは、シリンダーの内部に火種を作るための噴射で、メイン噴射の前に行われます。
プレ噴射により事前に火種を作っておくことで、スムーズな燃焼が可能となり、NOXの低減や騒音の低減ができます。
3.メイン噴射
メイン噴射とは、燃え切らずに残ってしまった燃料を完全に燃焼させるために行われる噴射です。
大気環境や人間の健康に悪影響を及ぼすPM(粒子状物質)は、燃焼温度が低く不完全燃焼してしまうと多く発生します。メイン噴射により不完全燃焼を防ぐと、発生するPM量を低減させられます。
4.ポスト噴射
ポスト噴射とは、メイン噴射の後に少量の燃料を追加で噴射する技術です。ポスト噴射は排出ガスの温度を上昇させ、排ガス後処理装置が効率的に機能するように設計されています。
具体的には、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)などの装置が最適な温度で作動し、排出ガス中の粒子状物質(PM)を効果的に除去します。
5.アフター噴射
アフター噴射とは、燃え切らずに残った燃料を完全に燃焼させるために行う噴射です。
アフター噴射することで排気ガス温度を高めて、有害物質の後処理を行う装置の作動効率を良くする効果もあります。
インジェクターが故障する原因
インジェクターの寿命はおよそ10年で、走行距離で考えると約10万キロと言われています。ただし、目安なので走行した距離や使用頻度、エンジンのコンディションによって早まる可能性もあります。
もし、インジェクターが故障すると、PMやNOXが低減できなくなるだけでなく、エンジンが機能しなくなる恐れもあります。ここでは、なぜインジェクターが故障するのか、その原因と症状について解説します。
インジェクターの内部に汚れが付着している
インジェクター内部にある滑走面に燃料やオイルが燃え切らずに残った「デポジット」という汚れが付着すると、インジェクターの動きが悪くなります。
インジェクター内部の汚れが原因で滑走がスムーズにできなくなると、噴射のタイミングがズレてしまい、PMやNOXの発生量が増えDPFの故障にも繋がります。
インジェクターの外部に汚れが付着している
カーボンの汚れがインジェクターのノズル先端に付着すると、噴射量が減ったり噴射が偏ったりと噴射状態が不安定になります。
噴霧状態が不安定になると燃焼が上手くいかず、PMの発生やパワー低減に繋がります。
インジェクターの不調が疑われる5つのサイン
インジェクターの調子が悪くなると、パワー不足やエンジン不良などさまざまな症状が現れます。ここでは、インジェクターの不調が疑われる5つのサインを紹介します。
エンジンの振動音が大きくなる
インジェクターの内部にカーボンの汚れが溜まると、噴射孔が詰まって適切な霧状の噴射ができなくなったり、インジェクターの動きが乱れます。
これにより燃料の噴射量やタイミングが不安定になり、乱れた噴射が行われることでエンジンの振動音が大きくなってしまいます。
パワー不足になる
インジェクターが詰まると燃料の噴射量やタイミングが安定しなくなり、加速した際にパワー不足を感じることがあります。以前より加速時のパワー不足を感じたら、インジェクターの不調を疑いましょう。
黒煙や白煙が増える
インジェクターが詰まったり燃料室が偏在化すると黒煙が発生します。一方で、白煙の発生は排気系へオイルが混入することや燃料過多が原因です。
インジェクターは、燃料の噴射量をコンピューターで制御しているので安定した燃料供給ができます。しかし、複数あるインジェクターの1本でも詰まりを起こすと、他のインジェクターが燃料不足を補うために噴射量を増やします。
燃料が過剰に噴出されると燃焼できなかった燃料が排気系に流入し、白煙が発生します。
DPFが故障する
インジェクターとDPFは密接な関係にあり、どちらもエンジンの排気システムにおいて重要な役割を果たします。
インジェクターが正常に霧状の燃料を噴射できなくなると不完全燃焼が発生し、大量の煤(スス)が生成され、DPFフィルターの詰まりを引き起こす原因となります。
さらに噴射のタイミングがずれると、DPF再生のために行われるポスト噴射が正しく作動しなくなり、DPFの再生機能が低下して不具合が発生する可能性があります。
エンジン不良が起きる
インジェクターが不調になるとエンジンの動作に影響を及ぼし、エンジン不良が起きることがあります。具体的なサインの一つとしてセルモーターが正常に回っているにもかかわらず、エンジンがかからなかったり、かかりにくくなります。
これはインジェクターが詰まって燃料が正しく供給されないために、燃焼がうまく行われず、エンジンが始動しにくくなるためです。
インジェクターの故障を予防する方法
走行距離が増えるにつれてインジェクターの不調が増えることは当然のことかもしれません。しかし、定期的なメンテナンスをすることでインジェクターの故障を予防して寿命を伸ばせます。
ここでは、インジェクターの故障を予防するための方法について解説します。
インジェクターを業者に依頼して洗浄する
インジェクターのお手入れ方法として、専門業者に依頼して洗浄してもらう方法があります。業者でインジェクターを洗浄する一般的な流れは以下の通りです。
1. 車両を診断する
2. インジェクターを取り外す
3. インジェクターの内部を洗浄する
4. インジェクターを取り付ける
インジェクター洗浄の費用は、1万円ほどかかります。
添加剤(インジェクタークリーナー)を使ってメンテナンスする
インジェクターのメンテナンスをする際に添加剤を使ってケアする方法があります。燃料タンクに直接注入することで、走行中にインジェクターや燃焼室に付着した汚れやカーボンを除去し、燃料の噴射効率を改善する効果があります。
添加剤を使ったメンテナンス方法は手軽でコストも比較的低いため、定期的なメンテナンスとして最適です。近くにインジェクター洗浄に対応した業者がない場合やもっと手軽にコストを抑えてインジェクターをメンテナンスしたい方は、ぜひ添加剤を使いましょう。
インジェクター洗浄におすすめの添加剤(インジェクタークリーナー)をご紹介
インジェクターを洗浄するための添加剤や洗浄液には様々な種類があります。どの商品を使えばいいか悩んでしまう方は、BGの添加剤をおすすめします。
BGは世界的な大手ケミカルメーカーであり、アメリカで50年以上の歴史を持つ信頼性の高い企業です。ここでは、BGが販売しているインジェクター洗浄におすすめの商品を紹介します。
ディーゼルケア スタートセット|これさえあれば完璧!

必要な添加剤と専用洗浄器具がセットになった「ディーゼルケア スタートセット」は、ディーゼルエンジンの燃料系統を徹底的にクリーニングするための特別セット商品です。
BGが独自に開発して販売されている専用洗浄器具と必要な添加剤「DFCプラスHP(BG23232)」「ディーゼルケア(BG22932)」がセットになっているので、すぐに洗浄することが可能です。また、この専用洗浄器具を使うことで効果を感じるのが早いという強いもあります。
ディーゼルケア スタートセットは、アメリカやヨーロッパ、日本の大手ディーラーなど世界中で使用されているため、安全性の高さを重視する方も安心して利用できるでしょう。
紫ラベル「DFCプラスHP」|燃料タンクに入れるだけでOK

インジェクターが汚れているとススを燃焼する装置の温度が300〜400度ほどまでしか上がらず、燃焼しきらなかったススがDPFフィルターに蓄積され不調や故障の原因となります。
紫ラベル「DFCプラスHP」を燃料タンクに入れると、インジェクターに付着した汚れを少しずつ溶かしていきます。紫ラベル「DFCプラスHP」でインジェクターの汚れを落とすことで、燃焼温度が500〜600度と理想的な状態になり、DPF内に蓄積されたススが燃えていきます。
燃料タンクに入れるだけでいいので、どなたでも問題なく利用できるでしょう。
定期的なインジェクター洗浄でエンジンの不調や故障を防ごう!

インジェクターの洗浄はディーゼルエンジンの性能を維持し、燃費や環境性能を向上させるために欠かせない作業です。
インジェクター洗浄には専門業者に依頼する方法がありますが、添加剤を使用すればより手軽に低コストでメンテナンスができます。
今回紹介したBGの添加剤や洗浄剤を使って定期的なメンテナンスを行い、エンジンのパフォーマンスを最適な状態に維持しましょう。
BGのインジェクタークリーナーについて詳しく知りたい方はこちら