ご存知の通り近年のディーゼル車には、排気ガス中の「すす(PM)」を捕集するためのDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)が装着されています。環境性能を守るうえで欠かせない装置ですが、一度トラブルになると、再生回数が異常に増える・出力制限がかかる・最悪の場合、DPF本体の交換が必要になるなど大きな負担となります。
そのDPFの寿命に、実は大きく関わっているのがエンジンオイルです。「どんなオイルを入れるか」「どのタイミングで交換するか」によって、DPFの負荷や寿命は大きく変わります。
この記事では、エンジンオイルとDPF寿命の関係について触れ、効果・リスク・実践方法を分かりやすく解説します。

著者紹介
全米シェアNo.1の自動車用品(添加剤・洗浄剤)を扱うBG Japanの「ケミカル副社長」です。
BG Japanでは、自動車(ガソリン・ディーゼル)に使われている様々な潤滑油や洗浄剤を販売しています。BGでは、最新・最先端の技術で製品を作っており、科学に基づいた製品を使うことにより、車両をより良い状態で維持できます。
今回の記事では、DPFを長持ちさせるエンジンオイル選びと交換サイクルについて解説します。おすすめの添加剤も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
なぜエンジンオイルがDPF寿命に影響するのか

DPFの詰まりや寿命と聞くと、「走り方」や「再生頻度」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はその土台になっているのがエンジンオイルの種類と状態です。
オイルに含まれる添加剤の一部は燃焼の過程で灰分となり、再生では燃え切らずにDPF内部へ少しずつ蓄積していきます。さらに、オイルの劣化やオイル上がり・燃料希釈が進むと、ススや灰分の発生量が増え、DPFの負荷は一気に高まります。
ここでは、「すす」と「灰分」の違いと、オイル成分・オイル管理がどのような仕組みでDPF寿命に直結しているのかを整理していきます。
「すす」と一緒にたまっていく“灰分”の存在
DPFの役割は、排気ガス中の「すす(スス)」をフィルターで捕まえることです。すすはDPF内部に蓄積していきますが、一定量たまると自動再生(再生燃焼)によって燃やされ、またフィルターが使える状態に戻ります。
ただし、DPF内部にたまるのはすすだけではありません。燃料やオイルに含まれる添加剤・燃え残った微細な無機物などは、再生で燃え切らず、「灰分(アッシュ)」としてフィルター内に残り続けます。
- すす → 再生で燃えてなくなる(リセット可能)
- 灰分 → 再生では燃えない(じわじわ蓄積していく)
この灰分が一定量を超えると、DPFの有効容積が減り、再生しても抜けない“詰まり”が発生しやすくなるのです。
オイル中の添加剤とDPFの関係
エンジンオイルには、摩耗防止・酸化防止・清浄分散など、さまざまな役割を持つ添加剤が入っています。これらの一部は、燃焼の過程で灰分として排気側に回り、DPFに蓄積します。
そのため近年のディーゼル車では、低灰分(low SAPS)・DPF装着車対応・ACEA C規格(C2 / C3 / C4 など)といった表記のあるオイルが指定されるようになりました。逆に、こうした指定に合わないオイルを使い続けると、灰分の発生量が増え、DPF寿命を早く削ることになります。
DPF付きディーゼル車に適したエンジンオイルとは

DPFを長持ちさせるうえで欠かせないのが、「どんなエンジンオイルを選ぶか」です。粘度だけを見て「0W-30なら大体OKだろう」と判断してしまうケースもありますが、DPF付きディーゼル車ではそれだけでは不十分です。
オイルごとに灰分量や添加剤の配合が異なり、DPF対応設計(low SAPS)かどうかで、フィルター内にたまっていく灰分の量が大きく変わってきます。ここでは、DPF付きディーゼル車に求められるオイルの条件と、「粘度・規格・DPF対応」の3点をどう確認すべきかを整理していきます。
粘度だけでは不十分。「規格」と「DPF対応」をセットで確認
ユーザーがやりがちなのが、「純正指定と同じ0W-30なら、安いオイルでも大丈夫だろう」という選び方です。しかし実際には、粘度(0W-30 / 5W-30 など)・規格(ACEA C3 など)・「DPF対応」「低灰分」表記の有無この3つをセットで満たしていることが重要です。
粘度だけを合わせても、灰分の多いフルSAPSオイルを使ってしまえば、
- DPF内部に残る灰分が増える
- 再生頻度が上がり、差圧が高くなりやすい
- 清掃・交換が早まる
といったリスクが高まります。
メーカー指定を守ることが“最安のDPF対策”
近年のディーゼルエンジンは、DPFやEGR、SCRといった排気後処理装置とセットで設計されています。そのため、取扱説明書や整備書に書かれている「指定粘度」「指定規格」「DPF対応オイルの使用」を守ることが、エンジン本体とDPFを同時に守るうえで最もコスパの良い対策になります。
逆に言えば、オイル代を数千円ケチった結果、数十万円クラスのDPF交換につながる……というのは、現場では珍しくないパターンです。
オイル管理が悪い場合にDPFに起きること

DPFの負担を増やしている原因は、「構造上の弱点」だけではなく、日々のオイル管理にもあります。オイル交換を先延ばしにしたり、劣化したまま走り続けると、燃焼状態が悪化してススの発生量が増え、DPFは頻繁な再生を強いられます。
さらに、オイル上がりや燃料希釈が進むと、オイル由来の灰分が直接DPFに送り込まれ、再生では消えない“詰まり”の元になります。ここでは、オイル管理の不備がどのようなプロセスでDPFトラブルや寿命短縮につながっていくのかを、順を追って整理していきます。
劣化オイル → 燃焼悪化 → スス増加
オイルは、高温・高負荷・燃料混入(希釈)・外部からの汚れ混入により、少しずつ性能が落ちていきます。劣化したオイルを使い続けると、摩擦増加やシール性低下などから燃焼状態が悪化し、ススの発生量が増える傾向があります。
結果として、
- DPFがすぐススでいっぱいになる
- 再生頻度が増える
- 燃費悪化・オイル希釈の悪循環
といった状態に陥りやすくなります。
オイル上がり・オイル希釈 → 灰分を直接送り込む
ピストンリングやターボシールの摩耗などでオイル上がりが起きると、オイルそのものが燃焼室で燃やされます。このとき、オイル中の添加剤由来の成分が灰分としてDPFに送り込まれることになります。
また、DPF再生時の後噴射などによって燃料がオイル側に混ざるオイル希釈が進むと、オイルの性能劣化が早まり、やはりスス・灰分の増加につながります。
オイル交換サイクルを延ばしすぎるリスク
「ロングライフオイルだから大丈夫」と、走行距離・期間ギリギリまで引っ張るケースもよく見られますが、シビアコンディション(短距離・渋滞・アイドリング多用)・再生による燃料希釈などが重なっていると、想定よりずっと早くオイルが限界を迎えている可能性もあります。
結果として、
- 再生のたびに負荷がかかる
- 差圧が上がり、警告灯や出力制限が出やすくなる
- 清掃や交換が必要になるタイミングが早まる
といった「見えないコスト」が蓄積していきます。
DPFを守るオイル選び・交換サイクルのポイント

DPFを長持ちさせるうえで、「どんなオイルを入れるか」と同じくらい重要なのが「いつ・どのくらいの間隔で替えるか」です。せっかくDPF対応の良いオイルを選んでも、走行環境に合わないロングサイクルで使い続けてしまうと、劣化が進んでススや灰分の発生が増え、結果的にDPFへの負荷を高めてしまいます。
このパートでは、DPF付きディーゼル車なら必ず押さえておきたい、オイルの選び方のチェックポイントと、走り方に合わせた現実的な交換タイミングの考え方を整理していきます。
1. 「DPF対応」「低灰分」の表記を必ずチェック
オイルの缶や商品ページには、
- DPF対応
- 低SAPS / low SAPS
- ACEA C2 / C3 / C4 などのC規格
といった表示があります。DPF付きディーゼル車では、これらの条件を満たすオイルを選ぶことが基本です。「純正と同じ粘度だから大丈夫」ではなく、「粘度+規格+DPF対応」をセットで確認するようにしましょう。
2. 自分の使用環境を「シビアコンディション」前提で考える
以下のような使い方は、ほとんどがシビアコンディションに該当します。
- 片道数kmの短距離移動を繰り返す
- 渋滞路・市街地走行が中心
- アイドリング時間が長い(配送・現場待機など)
- 低速・低回転がメインで、たまにしか高速に乗らない
このような環境では、取扱説明書に書かれている「通常使用の交換目安」よりも、早めの交換サイクルを意識したほうが、結果的にDPFを含む排気系トラブルのリスクを抑えられます。
3. オイル量と状態を定期的に目視チェックする
- オイル量が減り続けている → オイル上がり・オイル漏れの疑い
- 逆に、減らずに増えている → 燃料希釈の疑い
- 走行距離の割にオイルの汚れが極端に早い → 燃焼悪化・スラッジ蓄積のサイン
といったように、レベルゲージとオイルの状態を見るだけでも分かることは多くあります。異常を感じた場合は、「次の車検まで様子を見る」ではなく、早めに整備工場で診断を受けることで、DPFを含む大きなトラブルを未然に防ぎやすくなります。
BGケミカルを組み合わせた「オイル+燃焼」のトータル管理
ここからは、エンジンオイル単体だけでなく、BGケミカルを組み合わせたメンテナンス例を紹介します。ポイントは、“汚さないようにする”ことと“汚れたら早めにリセットする”ことをセットで考えるイメージです。
エンジン内部洗浄(フラッシング)で一度リセット

オイルラインやピストンリング周りにたまったスラッジ・ワニスは、オイル劣化やオイル上がりの原因になります。
そこで、
- オイル交換前にフラッシング剤(BG109 EPRなど)を投入
- 規定時間アイドリングして内部を洗浄
- その後、新しいオイルとフィルターに交換
という手順で、一度エンジン内部をリフレッシュします。これにより、ピストンリングの動きがスムーズになる・圧縮や油圧が安定し、燃焼状態が整う・結果として、スス・灰分の発生要因を減らせるといった効果が期待できます。
オイル添加剤でオイル自体の性能を長持ちさせる

フラッシング後に、オイル添加剤(BG110 MOAなど)を併用すると、
- オイルの酸化やせん断を抑制
- 清浄分散性を高め、スラッジが固着しにくい状態を維持
- メカニカルノイズの低減
といったメリットが得られます。
結果として、オイルのコンディションを長く良好に保ちやすくなる、DPFにとって望ましい「きれいな燃焼状態」を支えやすくなるという形で、間接的にDPF寿命の延命にもつながります。
燃焼改善系ディーゼル添加剤でスス発生を抑える

さらに、燃焼改善型のディーゼル添加剤(BG23232 DFCプラスなど)を燃料側に使用することで、
- 燃焼効率の向上
- スス発生量の低減
- DPF再生間隔の延長
といった効果が狙えます。
「フラッシングで内部を洗う」 「オイル添加剤でオイルを守る」 「燃焼改善剤でススそのものを減らす」という3ステップを組み合わせることで、エンジンオイルとDPFをトータルでケアするメンテナンスメニューを構成できます。
dpfとエンジンオイルに関するよくある質問
Q. DPF対応ではないオイルを一度入れてしまいました。どうすればいいですか?
一度入れたからといって即トラブルになるとは限りませんが、そのまま長期間使用し続けるのはおすすめできません。可能であれば早めに正規のDPF対応オイルへ交換し、その後は指定規格のオイルを継続使用することを心がけてください。
Q. ロングライフオイルなら、交換間隔を伸ばしてもDPFに影響はありませんか?
ロングライフオイルは、あくまで「同条件で従来より長く使える」ように設計されたオイルです。短距離走行・渋滞路・アイドリング多用といったシビアコンディションでは、ロングライフであっても早めの交換を前提に考えたほうが安全です。
「ロングライフだから大丈夫」と過信して交換を先延ばしにすると、オイル劣化によるスス増加・灰分蓄積を招き、結果的にDPF寿命を縮めてしまう可能性があります。
Q. オイルだけ正しくしていれば、DPFは詰まりませんか?
残念ながら、「オイル管理さえ完璧なら絶対にDPFトラブルが起きない」というわけではありません。走行条件やエンジンの個体差、EGRの状態など、さまざまな要素が絡み合っています。
ただし、オイルの種類と交換サイクルの見直しは、DPF寿命を延ばすうえで最もコストパフォーマンスの高い対策のひとつであることは間違いありません。すでに警告灯点灯や出力制限などの症状が出ている場合は、オイル管理と並行して、別記事「DPF不具合まとめ」を参考に、専門工場での診断・清掃もご検討ください。
DPFを守る近道は「オイルを甘く見ない」こと

- DPFはススだけでなく、オイル由来の灰分も蓄積する
- 灰分は再生では燃えず、DPFの有効容積をじわじわ削っていく
- DPF対応・低灰分オイルを選び、使用環境に合わせて早めの交換サイクルを心がけることが、寿命延長のカギ
- さらに、フラッシング・オイル添加剤・燃焼改善剤を組み合わせることで、オイルと燃焼をトータルで整え、DPFへの負荷を減らすことができる
まずは、現在使用しているオイルが本当にDPF対応かどうかを確認し、次のオイル交換から、指定規格のDPF対応オイルへの切り替え・使用環境を踏まえた交換サイクルの見直しを進めていくことが、最も確実で現実的な対策になります。
DPFの症状やBG添加剤を使った具体的な改善方法については、下記の関連記事もあわせてご覧いただきながら、トータルでのメンテナンス計画を検討してみてください。
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