ご存知の通り、ディーゼルエンジンは、熱効率が高いため燃費が良く、大きなトルクを発生させることができるため、パワフルな走りが実現できます。また、シンプルな構造で耐久性も高く、トラックやバスなど日常的に使用頻度の高い車に使われています。
ディーゼル車用のエンジンオイルはさまざまありますが、大きく分けると大型と小型用のエンジンオイルがあり、その中でもクリーンディーゼル用のエンジンオイルは、排ガス規制に対応できる高性能のエンジンオイルです。
本記事では、クリーンディーゼル用のエンジンオイルの規格や特徴について詳しく解説します。また、クリーンディーゼル用エンジンオイルを交換する際に添加すべき最強のエンジンオイル添加剤についても紹介します。

著者紹介
全米シェアNo.1の自動車用品(添加剤・洗浄剤)を扱うBG Japanの「ケミカル副社長」です。
BG Japanでは、自動車(ガソリン・ディーゼル)に使われている様々な潤滑油や洗浄剤を販売しています。BGでは、最新・最先端の技術で製品を作っており、科学に基づいた製品を使うことにより、車両をより良い状態で維持できます。
今回の記事では、クリーンディーゼル用のエンジンオイルの特徴や規格について解説します。DH-2はもちろん、DL-1規格にも対応している最強添加剤も紹介していますので、整備士の方はぜひ参考にされてください。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルとは

最近では、2009年に制定されたポスト新長期規制という排出ガス規制に対応できるクリーンディーゼル車も増えてきました。整備士の方もクリーンディーゼル車のメンテナンスをする機会も増えたのではないでしょうか。
クリーンディーゼル用エンジンオイルは、ディーゼルエンジン専用のオイルで排ガス規制に対応するために開発されたオイルです。
ディーゼル専用のエンジンオイルは一般的なオイルに比べて、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などの排出を抑える効果があります。また、潤滑性や清浄性にも優れているため、エンジン内部をしっかりと保護する役割があり、結果として燃費の向上にも役立ちます。
【クリーンディーゼル用のエンジンオイルと一般的なエンジンオイルの違い】
クリーンディーゼル用のエンジンオイルの特徴をおさらい

クリーンディーゼル用エンジンオイルには、さまざまな特徴があります。
排ガス規制に対応している
クリーンディーゼル車には、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)が搭載されており、これがススなどの排出物を捕集して排ガスをクリーンに保つ役割を果たしています。このDPFが詰まらずに正常に機能し続けるためには、エンジンオイルに含まれる金属成分(添加剤由来)をできるだけ少なく抑える必要があります。
そのため、クリーンディーゼル用のエンジンオイルは、DPFを目詰まりさせる原因となる金属成分を最小限に抑えています。これによりDPFの寿命を長持ちさせ、性能を維持して厳しい排ガス規制にも対応できるようになっています。
アッシュが少ない
一般的なディーゼルオイルは、オイルに含まれるアッシュ分が多く、燃えカスが排ガスの中に残ってしまい、DPFが目詰まりを起こします。
排ガスの中のススは定期的に燃やされますが、エンジンオイルの燃えカスはDPFでは燃焼されません。徐々に堆積され目詰まりを起こし、燃費を低下させたり故障の原因となったりする恐れがあります。クリーンディーゼル用のエンジンオイルを使うことで、アッシュを極力抑えてDPFを保護することができます。
酸化しづらい
クリーンディーゼルエンジンは、一般的なディーゼルエンジンと比較すると燃焼室内の温度が高温になりやすいという特性があります。
エンジンオイルは高温になると酸化が進み、粘度が低下する原因となります。オイルの粘度が下がると、出力不足やエンジンの焼き付きを引き起こすリスクも高まり危険です。
クリーンディーゼル用エンジンオイルは、燃焼室内の温度が高温でも酸化しづらい特徴を持っています。
潤滑性能に優れている
ディーゼル用エンジンオイルのアッシュを減らすためには、金属添加剤を減らす必要があります。しかし、金属添加剤を減らすとオイルの性能が低下するため、スラッジの発生による潤滑不良や燃費の悪化が起こります。
クリーンディーゼル用エンジンオイルの場合、潤滑性能や清浄分散性などのオイル性能を保持しながら、アッシュを減らすことが可能です。
燃費が良い
従来のディーゼルエンジンは、噴射ポンプを使って燃料を噴射するため、噴射を最適なタイミングに合わせられませんでした。
しかし、コモンレール式高圧燃料噴射装置によって、最適なタイミングの燃料噴射が可能になり、さらに電子制御できめ細かい燃料噴射の制御が可能となったため、高出力ながらも燃費が向上しています。
振動が少ない
ディーゼルエンジンは、高い圧力で燃料を燃やします。そのため、振動や騒音が発生しやすくなります。また、噴射タイミングがずれることで発生する異常燃焼も振動や騒音の原因です。
クリーンディーゼルエンジンは、コモンレールやインジェクター、ECUを組み合わせることで燃焼効率を向上させているため、異常燃焼による振動や騒音を大幅に抑えられています。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルの規格

クリーンディーゼル用のエンジンオイルの規格には、JASO規格があります。ガソリンエンジンオイルの場合、日本ではAPI規格(アメリカ石油協会)が主流です。API規格の中にもディーゼルエンジンオイルの規格「C(コマーシャル)カテゴリー」があります。
CF-4規格までは日本でもAPI規格が主に使用されていましたが、日本とアメリカの基準が異なっていたため、日本独自の基準を設けたJASO規格が導入されたのです。
【クリーンディーゼル用のエンジンオイルの規格(JASO規格)】
DH-2の特徴

DH-2は、大型ディーゼルエンジン車向けのエンジンオイルの規格です。日本のディーゼル排ガス規制強化に対応する新しいディーゼルエンジン規格を満たしています。排ガス清浄装置であるDPFの目詰まりを防止するための品質基準をクリアしている点も特徴です。
DH-2は2003年10月から実施されている東京、埼玉、千葉、神奈川の「排気ガス規制強化」に応える新しい環境配慮型のエンジンオイル規格で、大型トラックやバスに適しています。
オイルの基本的な性能は、2000年10月に発効された「DH-1」と同じレベルですが、次の点がDH-1とは異なります。
- アルカリ価が5.5以上
- 硫酸灰分は1% 以下
- 硫黄分は0.5%以下
- 塩素分は0.005%以下
低硫黄軽油はすでにあるため、DH-2では高い酸中和能力は必要ありません。そのため、アルカリ価は10以上から5.5以上になりました。酸性雨の原因物質である硫黄分は0.5%以下、ダイオキシンが発生する塩素も0.005%以下です。
DH-2により、従来の整備士の皆さんが使い慣れた添加剤の使用が制限されるようになったため、無灰分散剤が多く使われるようになりました。
DL-1の特徴

DL-1とは、小型トラックを含めた乗用ディーゼル車両が対象のディーゼルエンジンオイル規格です。DL-1はディーゼル車排出ガス規制とDPFを装着した乗用ディーゼル車に対応するために制定されました。DPF装着車に推奨される規格です。DL-1には次のような特徴があります。
- DPFの耐久性向上
- 高温酸化安定性の向上
- 燃費向上
- 低SAPS処方
DPFを装着した乗用ディーゼル車がDL-1以外の規格のオイルを使用すると、DPFが詰まる原因となる物質が増えてしまいDPFの耐久性も下がってしまいます。DL-1規格のオイルならDPFの目詰まりを防ぎ、DPFの耐久性を高められます。
また、高温酸化安定性が高いため、高温で使用する場合でもオイルの性能を維持できます。燃費性能も向上するため、環境への負荷軽減が可能です。さらに、DL-1は硫黄、灰分、リンを低減した低SAPS処方で、DPFの目詰まりを防ぎます。
「DH-2」と「DL-1」の違い
DH-2とDL-1は、どちらもディーゼルエンジンオイルの規格ですが、用途や添加剤成分の上限に違いがあります。
DH-2はバスやトラックなどの高い負荷のかかるディーゼルエンジン(主に商用車)向けに設計されていて、DL-1は乗用車などの負荷が低い車を対象とした規格です。
DH-2は、耐熱性や耐摩耗性が求められるため、清浄分散性・酸化安定性・摩耗防止性が重視されており、硫酸灰分(SAPs)などの含有量がDL-1より高めに設定されています。
一方、DL-1はDPFや排気触媒への影響を抑える必要があるため、金属系添加剤(リン・硫黄・硫酸灰分)の上限値が低く抑えられています。そのため、DL-1はDPF搭載車両での低負荷運転を前提とした設計です。
簡単にいえば、DH-2は耐久性重視の商用車向け、DL-1は排ガス後処理装置を保護するための乗用車向けオイルという違いがあります。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルを使うメリット

クリーンディーゼル用のエンジンオイルを使うメリットは、次のようなものがあります。
DPFの耐久性が高まる
クリーンディーゼル用のエンジンオイルは、APIのディーゼルグレードとは異なりエンジンオイル内の灰分量が規定されているため、DPFのつまりを防ぎ耐久性を高められます。
一般的なディーゼルエンジンの場合、一部のエンジンオイルも燃料とともに燃焼してしまい、その成分がDPFを詰まらせることになり寿命を短くする可能性もあります。 そのため、クリーンディーゼル車は指定された規格のエンジンオイルを使用することがとても重要です。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルは、DPFの目詰まりを防止する性能が特化されているため、DPFの寿命を伸ばすことが可能です。
排出ガスを規制できる
クリーンディーゼル用エンジンオイルは、排出ガス規制の基準に達するために窒素酸化物や粒子状物質などの排出を大幅に抑制できるよう設計されています。クリーンディーゼル車なら、環境に配慮しながら使用できます。
汚れを適切に除去できる
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて、ススや硫黄酸化物などが発生しやすく、エンジン内部に汚れがたまりやすいという特性があります。クリーンディーゼル用のエンジンオイルを使えば、これらの汚れを適切に除去できます。
エンジンの摩耗を抑える
クリーンディーゼル用のエンジンオイルは高い潤滑性能があるため、エンジン内部の部品の摩擦を減らし、摩耗を抑えます。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルの注意点

クリーンディーゼル車のメンテナンスをする際は、汎用性がないため、適切なエンジンオイルを選ぶことが重要です。
たとえば、DL-1が指定されている小型乗用車にDH-2規格のエンジンオイルを使用すると、DH-2の硫酸灰分が多いため、DPFがすぐに目詰まりしてしまうでしょう。
DH-2が指定されている大型乗用車にDL-1規格のオイルを使用すると すれば、DL-1の硫酸灰分が少ないため、清浄性が低下しエンジン内に汚れがたまるなどのトラブルが起こる可能性があります。
同様に、DL-1とACEA C3も汎用性がないため、異なる規格のエンジンオイルを使用することはできません。
クリーンディーゼル用のエンジンオイルの性能を引き上げるなら添加剤

クリーンディーゼル用のエンジンオイルの性能を最大限に引き出すなら、エンジンオイル添加剤の使用がおすすめです。
特に、クリーンディーゼルエンジンは精密な排ガス浄化システム(DPFなど)を搭載しているため、エンジンオイルの性能劣化がシステムに悪影響を及ぼす可能性があります。
高品質な添加剤は、エンジンオイルの酸化を防ぎ、スラッジの発生を抑制することで、エンジン内部をクリーンに保ちます。これにより、DPFの寿命を延ばし、排ガス性能を維持するだけでなく、燃費の向上やエンジンの長寿命化にも貢献します。
一般的な添加剤ではなく、クリーンディーゼルオイルに対応しているものを使用することで、性能をより長く、最適な状態に保つことができます。
おすすめのエンジンオイル添加剤はBGの「DOC」

クリーンディーゼル用のエンジンオイル添加剤なら、BGのDOCがおすすめです。DOCは、ディーゼルエンジン専用のエンジンオイル添加剤・強化剤ですが、DOCはDH-2はもちろん、DL-1規格にも対応しています。
エンジンオイル添加剤「DOC」の特徴
BG112 DOCは、ディーゼルエンジン専用に開発された高性能のエンジンオイル添加剤・強化剤です。エンジンを保護しながらエンジンの最適なパフォーマンスを引き出せます。
摩擦抵抗を極限まで低減し、エンジンを静かにパワフルに保ちながらディーゼルエンジンの性能を最大限に引き出してくれます。
DOCはピストンリング、バルブ、その他エンジン内部の構成部品を最適な状態に保ち、金属磨耗を極限まで低減させることでエンジン音を低減します。また、シリンダー内の異常高温を防止するため、エンジンオイルの酸化や固まりも防ぎます。
DOCによってエンジン内部の構成部品は最適な状態に保てるため、圧縮力を増してエンジンパワー・レスポンスを最大限まで引き出せるのが大きな特徴です。
また、超ゆっくり洗浄効果もポイントです。エンジン内部に溜まったカーボン・スラッジなどをゆっくり溶解していきます。
SL級オイルを超える性能
DOCは、TFOUT(薄膜酸化安定試験)・ASTM(米国材料試験協会)のD4742テストで、アメリカ大手メーカーのSL級オイルよりも200%以上の酸化性能を上回る結果を出しました。ディーゼルエンジン専用としては、最強のエンジンオイル添加剤・強化剤です。
エンジンオイル添加剤「DOC」の効果
DOCの効果には、次のようなものがあります。
- エンジン内部の保護
- エンジンパフォーマンスの回復と維持
- 静寂化
- スラッジの発生等の防止および保護
- エンジン内の酸化・凝固防止および保護
- エンジン内の摩擦・摩耗防止および保護
- ゆっくり洗浄効果
ディーゼルエンジンのノイズが気になる、エンジンのパワー不足を感じている、エンジン内部の汚れが気になるという場合は、DOCを使ってみてください。
また、エンジンを長持ちさせたい、エンジンオイルの性能を維持したいときにもおすすめです。
エンジンオイル添加剤「DOC」の使い方
BG112 DOCの容量は「BG11232(946ml)」と「BG112(325ml)」があります。BG11232(946ml)を使用する場合は、エンジンオイル12〜15リットルに対して946mlボトルを1本添加しましょう。
BG112(325ml)の場合は、エンジンオイル5リットルに対して325ml缶を1本を添加してください。
オイル交換時またはオイル交換の合間にクランクケースへ注ぎ、オイルレベルがフルマークになるよう調整しましょう。
エンジン内部に過度なスラッジ(汚れ)がすでに大量に発生している場合や、入れ過ぎには注意してください。また、BG112 DOCはディーゼルエンジン専用のエンジンオイル添加剤のため、ガソリン車には使用できません。
クリーンディーゼル車のエンジンオイルは規格が重要|エンジンを快適に保つなら添加剤を使用しよう

クリーンディーゼル車のエンジンオイルは、必ず規格に合ったものを選びましょう。汎用性がないため、異なるエンジンオイルを使用するとトラブルや故障につながります。
エンジンオイルの性能をより長く維持するなら、添加剤が便利です。DOCなら、DH-2はもちろん、DL-1規格にも対応していて、エンジンを保護しながらディーゼルエンジンの性能を最大限に引き出してくれます。